京の夏は暑い。
それも、じりじりと炭火で炙られているような、じっとりと汗が噴き出すような、気持ちの悪い暑さだ。
巡察から帰ってきた総司が、隊服も脱がずに縁側に座っていた。
熱っぽい顔で、しだいに暮れなずんでいく空を見上げている。
「総司、何を見ている?」
「え?」
俺が声をかけると、総司は驚いたように振り向いた。
「何だ、土方さんか」
「何だとは何だ。赤い顔をして、熱でもあるんじゃねえのか」
「大丈夫ですったら」
総司は軽い身のこなしで立ち上がると、影のない笑みを浮かべた。
それから、自分の額に手を当てて、ちょっと首を傾げてみせる。
「夏風邪かな」
「気をつけないと、ひどい目にあうぞ」
言いながら俺は、すばやく総司の肩に手を掛け、自分の額を奴の額にくっつけた。
じんわりと熱い。
(やっぱり風邪か――)
すぐ近くに、澄んだ眸子がある。熱のせいで、少し潤んだようなまなざしが、俺を見つめている。
俺は、知らず知らず、肩を抱く手に力を込めていた。
夏の夕暮れ。
ほんのひととき。
世界は、俺と総司の二人きり――。
うつりますよ、と総司が笑って身を離す。
肉の薄いその肩に、今まで触れていた掌がほんのりと熱い。
それは、総司の命の体温だ。
「馬鹿言え。風邪なんざ、俺には寄りつかねえさ」
俺は、できるだけ強面を作りながら言った。
それから四日後。
俺は今までにないほどの熱を出して、寝込んでいた。
――ちくしょう。うつった……。
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