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夢を継ぐ者  語り部のあとがき(と、言い訳)

人は死んでも、夢は受け継がれる

姜維と馬謖のお話です。とはいえ、なんだか盛り上がりに欠ける、暗い話ですみません……。m(__)m

当然、主人公は姜維のつもりで書き始めたのですが、いつの間にか馬謖の存在感の方が大きくなってしまいました。
実を言うと、この馬謖は、もっとワイルドな感じにしたかったのですよね。でも結局、なんかフツーの「ぼんぼん」になってしまいましたけれど。

馬謖という人、少し前までは、あまり好きではありませんでした。何しろ、諸葛亮の夢をぶち壊した張本人というイメージが、どうしてもついてまわってしまって……。「何もかも、お前のせいだ〜〜!」みたいな。
そんなかれが、ちょっぴりいいヤツに見えたのが、東映動画の劇場版アニメ「三国志」。さらに、中国湖北電視台制作のTVドラマ「諸葛亮」でけっこうグラッときて、とどめはスーパー歌舞伎「三国志U」の、段治郎さん演じる凛々しい馬謖でした。

それにしても、どうして馬謖は諸葛亮の指示に背いたのでしょうか?
この疑問に対する私なりのひとつの答えが、この小説です。
兄に対してずっと抱き続けてきた劣等感。姜維という、新しいライバルの出現。そして何よりも、諸葛亮に認められたいという「恋」にも似た情熱――。それらが混然となって、馬謖の冷静な判断を失わせてしまったのかもしれません。
馬謖にすれば、街亭は、自分に与えられた最後のチャンスだと思えたのではないでしょうか。諸葛亮も、何と罪作りな……。

この話、最初は、姜維と馬謖それぞれのモノローグで交互に語っていくという形式だったのですが、あまりに難しくて挫折しました。
それから、姜維側から見た話と馬謖側から見た話、2編でひとつという形も考えてみましたが、やはりこれも挫折。結局、現在の形になりました。
同じシチュエーションを、今度は馬謖の目で語ってみるのも面白いかもしれませんね。(でも、やっぱり暗そうだから、パス!)


この原稿は、春野蓬さん主宰の三国志創作サイト「銅雀台桃花大酒楼」に掲載していただいたものに、多少の修正を加えたものです。




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