いにしえ夢語り浅葱色の庭讃・新選組


夢のしずく

 


晴れ上がった空に ひとひらの雲
それは あなたの夢の欠片――


何の憂いもないほどに
高く 遠く 澄み渡った五月の空

視界いっぱいの蒼の中
あざやかに存在を主張する純白の雲

ただまぶしく すがすがしく


思い出はいつも浄化されて
綺麗なものしか残らないから

過ぎ去った夢は
きっと 宝石のように儚く美しい

あなたの苦悩も 悲嘆も 慙愧も
すべては 五月の空の蒼に溶け込んで……

やさしい風が 吹きぬけてゆくだけ


その時
空からふいに
ぽつり、と 手のひらに落ちてきたもの

雨なんて降っていないのに?

見上げればそこには ただ
目の覚めるような蒼が 広がっているだけ


それは
こぼれ落ちた夢のしずくだったろうか

今も中空にただよう
あなたの思いの残り香のように――






◆◇「夢のしずく」によせて◇◆

毎年5月は、もの思う季節です。
土方歳三の命日(5月11日)、沖田総司の命日(5月30日)――。
青く澄み渡った五月晴れの空を見ていると、ただそれだけで胸が痛くなってしまいます。空が青い、風が光っている、空気が澄み切っている……。そんなことさえも、何ともいえず切なくて、悲しくて。
植物が芽吹き、世界が動き始めるこの季節に、彼らは逝ってしまったんだなあ、って。訳もなくおセンチになってしまうんです。
この詩は、実は、5月限定でWeb拍手用に置いていた短文を手直ししたもの。
遊離さんのすてきなBGMのおかげで、雰囲気のあるページになりました。ありがとうございます。m(__)m



BGM lyra…/From「綴り唄

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