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夢の墓標




俺はあきらめぬ。
最後の最後まで、命尽きるその瞬間まで、
決して――。

そう言ってあなたは
本当に最期まで、天を睨んでいた。



地獄の如き戦場。
味方であるはずの軍勢が、雪崩をうつように裏切ってゆく。
次々に討ち取られてゆく西軍の将たち。

友が、同志が、
目の前で斃されてゆくのを
なす術もなく見守ることしかできずに。

身を斬られる思いで戦場を走り
敗残の身を山中に潜め
ついに捕えられて縄目の恥を受けても。

それでもなお
その双眸は不屈の焔を宿していた。

こんなところでは死ねぬ、と。
いつか敵を倒すその日までは、と。



あなたの目には、何が見えていたのだろう。
あなたのその燃える眸子は、どんな未来を見据えていたのだろう。



道を説くには、あまりにも時代が昏すぎた。
義を語るには、あまりにも人の心が荒みすぎていた。

それでもあなたは
理想を信じて戦い続け
最期まで、己の夢をあきらめなかったのですね。



関ヶ原に、秋風が立つ。

風は
かつてこの地に集い
力の限り戦い、散っていった男たちの
声無き叫びのようだ。

また、あの日がめぐってくる。
風が哭きわたる遠き日の戦場には
今も、男たちの夢の墓標がそびえている。






◆◇「夢の墓標」によせて◇◆

久々に拍手お礼用の詩をと考えたら、やっぱり戦国ネタになってしまいました。
われらが殿(石田三成)に捧げる詩です。
それにしても、関ヶ原で彼が戦ったのは、何が何でも豊臣家への忠誠を貫かんがためだけで、それ以外の野心とか、ましてや未来への展望とか、何もなかったんじゃないかという気がします。
このことからしてすでに、徳川家康とは勝負にならないですよね。たとえやり方が汚くても(だから許せないんですが…)、この時点で、日本の未来像を明確に思い描いていたのは、家康ただ一人だったかもしれません。
朝鮮出兵などの混乱から、すでに世の人心が、豊臣政権から離れていきつつあったというような現実さえ、三成には見えていなかったのでしょう。
思うことはいろいろあるけど、でもやっぱり、そんな不器用でまっすぐすぎる彼が好きです。結局、これが結論か…(笑)。



BGM 贖罪/From「遠来未来」

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