いにしえ夢語り蜀錦の庭三国志を詠う


予 感
  −香蓮から姜維へ−



初めは……

なんていけすかない人だろうと思った
意地悪で 不機嫌そうで
あなたの心がまるで見えなくて

知らなかったの

意地悪な言葉の裏に
とても優しい思いやりがこめられていたことを

不機嫌な視線の奥に
深い悲しみと孤独が隠れていることを



いつからだろう……

日常のなんでもない風景の中に
あなたの姿ばかりを追いかけるようになったのは

屈託のないあなたの笑顔を見てみたいと
心の底から思うようになったのは

お願い
私に笑いかけて
あなたの本当の言葉で 私に語りかけて――



ある日突然 恋に落ちる
そんなドラマチックな出会いではなくて
自分でも気づかないうちに
私の中のあなたの存在が どんどん大きくなっていく

そんな恋もあるのね……

これからも
きっと私は あなたに魅せられていくでしょう
自分ではどうしようもない 強い力に引き寄せられて


今 胸の奥底でふるえている
あえかな不安と期待

それは 確かな恋の予感――





◆◇「予感」によせて◇◆

「姜維と香蓮」のシリーズ第1作「いじわるな出会い」の宣伝用に、Web拍手お礼に書いた詩をアレンジしました。
拙サイトの設定では、姜維には二人の妻がいます。
一人は若い頃に出会った初恋のひと 春英。彼女とは、その後いろいろあって、ようやく再会してめでたく結ばれるのですが、姜維が魏から蜀へ降る際のどさくさで、春英は殺されてしまいます。
もう一人が、この詩に出てくる香蓮。彼女は孤児(みなしご)で、孔明に引き取られて成長します。そうして、姜維と出会う……。
春英との出会いはけっこう劇的で、その後のなりゆきもドラマチック。
それに比べて、香蓮と姜維は、何気なく出会い(しかも初対面の印象は、お互いあまりいいものではなく)、いつの間にか相手のことが気になっている、といった感じです。
これから少しずつ、この二人の物語を語っていこうと思っているのですが……。いやはや、先はまだまだ長いですね。



BGM 何時の間に/From「遠来未来」

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