今月のお気に入り

リー・リンチェイ大好き!

史上最強のヒーロー黄飛鴻、天地を揺るがす!


●リンチェイさまが好きだ〜!(笑)

以前、子どもに「お母さんは、役者さん誰が好き?」と聞かれて、「う〜〜ん」と困ってしまった。
「そんなの決まってるじゃん、この人が大好きなのよ!」と二つ返事でいえるほどの俳優さんがいないのだ。
もちろん、印象に残る作品、ステキな登場人物、心惹かれた人……はたくさんある(いる)。
何しろ、瞬間湯沸し器を自認する語り部である。これまでに惚れこんだ映画の登場人物は、それこそ数えきれないほど。比較的近いところなら、「ロード・オブ・ザ・リング」のアラゴルンさま。ほんとにもう、夢に出てくるくらい好きだった(笑)。
でも、それは「ロード〜」の中の、ヴィゴ・モーテンセン演じるアラゴルンが好きなのであって、ヴィゴ氏個人が好きというのとはちょっと違う。あくまでも役柄に惚れる方で、俳優さん個人に惚れこんでしまうことはあまりないのだ。
だから、「□□の映画で○○の役をやっていた××はサイコー!」というのはたくさんあるんだけれど、改めて「じゃ、誰が好き?」と聞かれると、返事に困ってしまうのだ。
もちろん、気になる俳優さん……っていうのは、何人かいるんだけどね。

その中の一人が、今回取り上げたリー・リンチェイ。
もう何十年も前になるけど、「少林寺」でデビューしたころからのファンである(←映画館まで見にいったし)。
当時のリンチェイさまは、まだ10代の初々しい青年だった。中国の武術大会の連続チャンピオンというふれこみで、演技はまだまだ素人くさかったけど(笑)、とにかく人間業とは思えない彼のカンフーのすばらしさ、鍛え上げられた肉体の美しさに、うっとりと見惚れたものだ。
それから10数年、そんな彼の魅力を改めて再発見したのが、ツイ・ハーク監督と組んだ「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ」シリーズ(ワンチャイシリーズ)の2作目「天地大乱」である。
ワンチャイシリーズは、清朝末期に活躍した実在の武術家である黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)を主人公にしたアクション映画。
黄飛鴻はジャッキー・チェンの出世作「酔拳」の主人公としても知られる。彼をモデルにした映画は数え切れないほど作られたが、本作は数ある「黄飛鴻」ものの中でも最高傑作といっていいだろう。

●「天地大乱」のツボ

ワンチャイシリーズは、監督や主演を変えて何作も作られたが、やはりリンチェイとツイ・ハークのコンビによる「天地黎明」「天地大乱」「天地争覇」の初期3部作が群を抜いている。
中でも、この「天地大乱」がシリーズ中随一と評判が高い。ストーリーもよくできており、何といってもクライマックスのリンチェイとドニー・イェンの対決シーンが最高だ!
ワイヤーアクションも満載だけど、ほとんど気にならないのは、やはり主役二人のうまさゆえ。ワイヤーやCGを使ったとしても、それでも誰でもが格好よくできるというわけではない。スピードや技の切れ、決めポーズ一つ取っても、やはり個人の力量が如実に出てしまうからだ。
そういう意味で、リンチェイとドニーの対決は、極限まで磨き上げられた「心・技・体」ががっぷりとぶつかり合い、本当に「美しい」のひとことである。
予告編のナレーションがこれまた、かっこよくてしびれた。

「この世に正義が失われ、滅び去ろうとする。
その動乱の大地に、彼は舞い降りた。その名は――黄飛鴻。
君は信じるか。嵐吹き荒れる激動の時代に実在したこの男を。
医者にして武術の達人。世を治し、人を治す。史上最強のヒーロー。
信じるものがあり、守るべき人がいる。
人が、大地が、正義に涙を流すとき、黄飛鴻、天地を揺るがす」

……とまあ、こうなんだから〜〜!
ジャッキー・チェンが歌ってるテーマ曲も好き! あの曲が流れてくるだけで、気持ちが高ぶってくるもんね〜〜(←いろんなところでやたら使われてるので、絶対みなさん一度は聞いたことがあるはず……笑)。
とまあ、与太話はこのくらいにして、あらすじを説明すると……。

弟子のフー、アメリカ帰りの叔母(といっても若くて美人のヒロイン)イーとともに広州へやってきた黄飛鴻。医学の集会に参加するためだったが、街では外国人排斥を叫ぶ「白蓮教」が治安を乱していた。学会で孫文と知り合い意気投合した二人だが、会場は突然「白蓮教」の暴徒たちに襲われる。
革命を夢見る若き日の孫文、それを支援する資産家。一方、清朝の高官は、「白蓮教」を利用して利権を得ようとたくらむ。民衆の正義と誇りを守ろうとするウォンたちの前に立ちふさがったのは、棒術の使い手ラン提督だった……。

このラン提督を演じているのが、ドニー・イェン。
彼のカンフーはほんとにすごい。早すぎて、どう動いているのかよくわからないほど(笑)。
リンチェイ演じるウォンと2度戦うシーンがあるのだが、どちらも息をするのを忘れてしまうほどの緊張感だ。特に、濡らした布を棒のように使う技は、実際にあんなことができるのかどうかよく分からないが、あまりの見事さに茫然となってしまう。
「天地大乱」のリンチェイとドニーの対決シーンは、カンフー映画の中でも屈指の名シーンといわれており、多くのファンは「もっと見たい!」と願っていたのだが、残念ながら、その後二人の競演は長い間実現しなかった。
それだけに、チャン・イーモウ監督の「英雄−HERO−」で、10数年ぶりにリンチェイとドニーが競演すると知ったときは、舞い上がらんばかりに興奮したものだ。
本当に信じられない気持ちで、ワクワク・ドキドキしつつ映画館に足を運んだ。
久しぶりの二人の対決は、冒頭あっという間に終わってしまったけれど、それでもやっぱりすごかった。
CGの使いすぎがあまりにももったいなくて、あの二人なら、CGなんかでごまかさなくても、生のアクションで十分美しいのに……とまあ不満は残ったけれど、でもでも、二人がスクリーンの中で戦っている、というそれだけで感動だったんだもの。

話の展開がけっこう安易だったり、香港映画っぽい無意味なギャグシーンとかもあったりして(笑)、ある程度好き嫌いは分かれるかもしれない。それでも、純粋にカンフーシーンを楽しむだけで、十分に見ごたえのある作品だと思う。
黄飛鴻の人物造形も巧みで、悪人には鬼のように強いが、想いを寄せる女性の前ではとことんシャイだったり、正義感あふれる熱血ヒーローが、リンチェイさまのキャラクターにぴったりはまっているのだ。
ヒロインのイーさんを演じているロザムンド・クァンはかわいくて美人だし、孫文役の役者さんもハンサム。白蓮教主と戦うシーンも手に汗握る面白さで、私にとっては文句なしにカンフーものの最高傑作である。

●やっぱりリンチェイさまが好き!(しつこい)

ほかにも、リンチェイさま主演の映画はほとんど見ているが、ワンチャイシリーズでは第1作の「天地黎明」とか、ウォンさま御一行がアメリカへ行って大暴れする「天地風雲」もなかなかよかった。
古装片ものでは、太極拳の開祖をモデルにした「大地無限」も面白かったなあ。後半、坊主頭もしくは辮髪ではない、ちゃんと髪の毛のあるリンチェイさまが見られる(笑)。
その後、ハリウッド映画に進出したが、どうして「ジェット・リー」なんて面白くもなんともない名前に変えてしまったのだろう(主演作品も何となくイマイチだし)。アメリカへ渡ってから撮った作品では、唯一「キス・オブ・ザ・ドラゴン」がまだ許せるかな。
そんな訳で、私にとっては、今も変わらず「リー・リンチェイ」さまだ。やっぱり香港明星で活躍していた頃が最高だった。
彼の古装片ものがもっと見たいなあ、と思っていたら、なんと最新作「SPIRIT」を最後にアクションはやめるという噂を聞いた。
え〜〜、どうしてっ? うそ〜〜! とびっくりしております。
まだまだ肉体的には大丈夫だと思うんだけどなあ……。敬虔な仏教徒であるリンチェイさまの精神的な問題なんだろうか。
それにしても、もったいない。もったいなさすぎる!(泣)
これからも、もっともっと美しいアクションを見せてほしいのに。事実だとしたら、本当に残念だ。
まだまだ書き足りないのに……書けば書くほど支離滅裂になってしまう。
最後にもう一度、これだけは叫ばせてっ(笑)!

リンチェイさま、大好きよ〜〜!
黄飛鴻は永遠です〜〜!


2006/4/1



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