いにしえ夢語り蜀錦の庭三国志を詠う


星に願いを…

−趙雲から翠蓮へ−




ほら
あれが 夏の大三角形

わし座のアルタイル
こと座のベガ
天の川をはさんで分かたれた ふたつの星

そして
隔てられた空間をつなぐ架け橋のごとく
銀河に輝く はくちょう座のデネブ

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今日は七夕
幼い日に 母から聞いたおとぎ話

天帝の怒りにふれ
遠く引き離されてしまった 織姫と彦星が
年に一度だけ 逢瀬を許された日だという

人はみな
恋人たちの悲しい運命(さだめ)に涙するけれど
わたしは
今 頭上に輝くふたつの星に
嫉妬さえ覚える



一年に一度でもいい
あなたに逢うことが叶うなら

夢でもいい
あなたをもう一度
この手に抱きしめることができるのならば、と



叶わぬこととは知りながら
今宵はせめて
星に願いをかけてみようか

もう一度 あなたに逢えますように
あなたに わたしの思いが届きますように

翠蓮――




◆◇「星に願いを…」によせて◇◆

実は、同じ「星に願いを」というタイトルで考えているSSがあります。
主役は趙雲さま! で、この短文は趙雲のモノローグだったりするわけで……。にしては、ちょっと女々しいかな(笑)。
翠蓮というのは、趙雲が唯一愛した女性です(当サイト限定設定)。けれども彼女との恋は、結局悲恋で終わってしまい、趙雲はその後翠蓮の面影だけを守り続けて、死ぬまで妻帯しませんでした。
ここから、例の「趙雲女嫌い説」が生まれたんですね〜。というのは冗談ですが…(笑)。
もう、想い出の中でしか逢うことのできない女人の、寂しげな笑顔を思い浮かべる度に、趙雲の胸は激しく痛みました。
ひとを愛したのは、おそらく、それが最初で最後だったのですから。
――たとえ一年に一度でも、逢うことが叶うのなら……。
なんとうらやましいことでしょう。
そんな切ない気持ちを詠んでみました。



BGM 胡蝶之夢/From「遠来未来」