いにしえ夢語り浅葱色の庭讃・新選組

私は土方さんのためなら いつでも笑っていられますよ


総司の剣


総司の剣は鋭く まっすぐ
我が身もろとも
敵のふところへ飛び込んでゆく
何の躊躇も 迷いもなく
 
なぜ そんなにも軽々と
生と死の境を越えてしまえるのか
 
お前が 向こう岸へ跳び移ったまま
二度と戻ってこないんじゃないかと
俺はいつも不安だった


総身に血をあびながら――
自らの魂もまた 血を流しながら――

どうして お前は
いつも笑っていられる?

出会った頃の
無垢な少年の心のまま
この痛々しい現実の中に 立っていられるんだ?

お前が傷つき 血を流し
声にならない慟哭をあげるのを聞きながら
俺にはなにもできないのか


もういい
もう笑わなくていい

せめて……
せめて 俺の前では 涙を見せてくれ
本当のお前をさらしてくれ

その細い腕には 抱えきれないほどの
悲しみも 怒りも 不安も 痛みも
すべて俺が受け止めてやる


それでもやっぱり お前は
透き通るように笑っている
総司の剣は 今日も まっすぐに敵を貫く

俺のために――?
俺のために お前は――?

この修羅は俺のため
そしてまた その笑顔も俺のため


総司…… 死ぬな!


どんなことがあっても
俺がお前を守ってやる
絶対に守ってやる

だから 総司
俺より先に死ぬんじゃねえぞ!


ありがとう 土方さん
私はね……
土方さんのためなら
いつでも笑っていられますよ

命尽きる その瞬間まで――




◆◇「総司の剣」によせて◇◆

沖田総司というと、今でも印象に残っているのは、テレビで見た島田順司さん。そして、有川博さん。
お二人とも、決して美青年というタイプの俳優さんではなかったが、清潔で、見るからに「いいひと」という感じの総司だった。そして、とにかく笑顔がいいのだ。
「透きとおるような」と形容される総司の笑顔は、おそらく血みどろの修羅の世界に身をおきながら、それでも決してその穢れに染まらない、かれの純粋な魂を映したものだと思う。
けれど、生身の総司は、やはりそれなりに迷いもし、苦しみもしたはずだ。ただそれを、決して人には見せなかった……。
土方は、そんな総司が歯がゆくてならない。何もかも自分ひとりで抱え込んで、超然と立っているかれの孤独を、土方なら分かっていたはずだから。

もっと、自分を出せよ。弱音を吐けよ。俺の中で甘えろよ――。
お前の何もかもを、俺が受け止めてやるから。

私の中では、二人はこんな理想の関係なのだ。
最後は、まんまオリジナル小説「掌上の雪」の中のセリフになってしまった。手抜きですみません(汗)。



BGM 勿忘草/From「TAM Music Factory」