I LOVE 新選組

私が新選組にはまるまで

新選組との出会い

新選組が好きだ。
高校生の時からだから、もう30年以上もファンを続けている。(歳がばれますなあ……爆)
きっかけは、当時テレビで放送されていた「新選組」というドラマである。
残念ながら?栗塚旭氏が主演していた「新選組血風録」「燃えよ剣」ではない。主人公は近藤勇で、鶴田浩二氏が演じていた。土方歳三は栗塚氏だったのだが、前述の2作に比べるとどうしてもこちらは一段落ちてしまうらしい。(といっても、その当時はそんなことはまったく感じなかった……というか、比較するものがなかったし)

で、ごく一般的(当時の女子高生として……笑)に、沖田総司にハマってしまったのだ。
そのドラマで沖田を演じていたのは、有川博という俳優さんだった。これもまた、前述の2作で沖田総司を演じ、まさにはまり役といわれた島田順司氏に比べると、いかにも影が薄い。
しか〜し!しかしである。私が新選組というドロ沼(笑)に足を突っ込むことになったきっかけは、確かにこの「新選組」、そして有川博氏の沖田総司に魅せられたせいだった。

今も多くの人がその魅力を絶賛してやまないテレビドラマ「新選組血風録」と「燃えよ剣」。
私、実は「血風録」の方はリアルタイムで見ていたのである。といっても、小学校3年生くらいの時のこと。ほとんど記憶にはないのだが、それでも鮮烈に覚えているシーンもいくつかある。それだけ印象的なドラマだったということなのだろう。
「燃えよ剣」の方は、残念ながら本放送の時はまったく見ていなかった。

というわけで、本格的に見た初めての新選組ドラマがこの「新選組」だったのだが、今ではほとんど話題にのぼらないのがちょっぴり悲しい。
有川さんの総司は、ほんとにステキだったんだけどなあ…。
島田順司さんとはまた違う、ほとんど暗さを感じさせない「いいひと」っていう雰囲気の総司だった。そんな彼が、たまに見せる寂しげな表情が、何ともいえず悲しくて。
そして、「声」がね、すご〜〜くよかったの!
この前「ロード・オブ・ザ・リング」の日本語吹替版で、有川さんがガンダルフの声をあてておられたのを聞いて、懐かしさのあまり狂喜してしまった(笑)。そう、ほんとに「いい声」なのです。

司馬遼太郎に魅せられて

やがて、お決まりの転落の道を一気に転がり落ちていく女子高生(笑)。
私の高校3年間は、新選組にあけて新選組にくれたといっていい。
最初に読んだ新選組関係の本は、子母澤寛の「新選組始末記」である。当時、新選組を知るためにはまずこれを、と言われていた本だ。
面白かったけれど、どちらかというと読み物というより、資料的価値の高いものだったように思う。

次に手に取ったのが、司馬遼太郎氏の名作「新選組血風録」だった。我ながら幸運な手順だったというべきだろう。
「沖田総司の恋」に涙し、わざわざ作品の舞台になった清水寺の音羽の滝に出かけて、前の茶店で土方さんよろしく草もちを食べたり(笑)、同好の友人と壬生詣でをしたりもしたっけ……。(遠い目)
とにかく最初は、沖田総司どっぷりだった。
「沖田総司」の著者であり、総司研究の第一人者でもある大内美予子さんに、総司あてラブレターまがいのお手紙を出したこともあった。丁寧なお返事を頂いたが、内心苦笑しておられたのではないだろうか。
本当にありがとうございました。

もうこの頃になると、「新選組」と名前のつくものは手当たり次第むさぼる中毒症状に。(新人物往来社には、ずいぶんお世話に……いや、ずいぶん散財させられました)
また、山南敬助という隊士に心惹かれ、歴研(高校の部活)のレポートに取り上げたりもした。
山南は、試衛館以来の同志で、局長に次ぐ総長という重職にありながら、意見の対立から隊を脱走し、ついには切腹して果てる悲劇の人である。未だに彼の脱走の真意は、謎に包まれたままだ。

そしてついに、運命の1冊との出会いが訪れる。
「燃えよ剣」
出会うべき時期に、出会うべき作品にめぐり会えたことの幸せ!
この本に出会わなければ、おそらく今の私はなかっただろう。そう思えるくらいの衝撃だった。
司馬遼太郎氏の膨大な作品群の中でも(それほどたくさん読んでいるわけではないので、エラソーなことは言えないが……)、面白さと、読んだ人間を虜にするという点で、私はやはり「燃えよ剣」が頂点だと思う。
この本で新選組と土方歳三にはまり、泥沼化してしまった人を、少なくとも4人知っている(そのうち一人はうちの息子だ……笑)。

とにもかくにも、この小説に描かれた土方歳三という男。これほど鮮烈で、「かっこいい」男を、私はほかに知らない。
もちろん欠点だらけだし、人間的には性格破綻しているような危ないところもあるし、どちらかといえば「悪人」だ。
だが、あくまでも己の信念にこだわり、それに殉じようとするかれの峻烈な生き様は、すでに善悪の範疇を超えている。
それまで、幕末史の中のほんの脇役(しかも敵役)に過ぎなかった土方を、存在感あふれる魅力的な男として世に知らしめたのは、まさしく司馬遼太郎氏の功績だろう。
それ以降の小説やドラマの土方は、多かれ少なかれこの作品の影響を受けているといっても過言ではない。

40年も前の作品なのに、今もまったく色褪せない。それどころか、今の沈滞しきった日本、疲れた現代人に、喝と勇気を与えてくれる。
「燃えよ剣」は、その文章の端々に至るまで、作者である司馬さんの主人公土方歳三に寄せる深い愛情がにじむ名作である。
こうして、私は新選組というどツボにはまり、今に至っている。