I LOVE 新選組

「るろ剣」で斎藤一のイメージが変わった!

何年か前、「るろうに剣心」というアニメにはまったことがありました。
本放送の時には、ろくすっぽちゃんと見ていなかったのですが、その後、レンタル屋さんでビデオを借りて、すっかり虜になってしまったのですね。(いつものパターンだよな〜)
その後、マンガも全巻揃えて読破しましたが、やはり何といっても面白かったのは、アニメ版の志々雄(京都)編。ストーリーはほぼ原作どおりなのですが、動きのある分だけアニメの方が迫力があって、ひきつけられました。毎回、手に汗握ってたような……。

で、ここに登場する元新選組三番隊組長 斎藤一が、おそろしくかっこいいのですよ!
明治になってからのお話なので、かれも藤田五郎と名を改め、警察官に転身しています。
しかし、原作者の和月和宏氏は、斎藤を、「壬生の狼」と恐れられた新選組の誇りと志操を今もなおひきずり続ける孤高の男として描いてくれてるんですね。
かれは、新選組唯一の生き残りとして、明治維新から十年を経た今も、幕末の修羅の中に生きているのでした。そのクール(というよりはダーティ?)でニヒルな生きざまの見事さ。しびれます〜〜(笑)。

この作品を見て、私の中の斎藤一のイメージが変わったといっても過言ではありません。というか、それまで漠然と抱いていた斎藤像が、はっきりした形で確立したというべきでしょうか。
今まで、いろいろな作品で斎藤一という人に触れてきたはずなのに、なぜかその印象は曖昧で、もうひとつ捉えどころのないキャラクターでした。
テレビドラマの「新選組血風録」では、左右田一平氏が飄々とした斎藤を演じていて、私の中では「何となく人のいいおじさん」的なイメージが定着していたのですが、実際の経歴や新選組時代の活躍を見てみると、謎の部分が多く、どことなくダークな雰囲気があったりします。
しかも、沖田総司と同じかまだ若いくらいの年齢だったと聞いて、ますますびっくり。そんなに若い人だったのですねえ。
こうして、「左右田」斎藤のイメージが見事に崩れ去ったところへ、この「るろ剣」斎藤が登場したのでした。

◆志々雄編のあらすじ

「るろうに剣心」の主人公緋村剣心は、かつて幕末の京で暗殺の剣を奮い「人斬り抜刀斎」と恐れられた長州系の浪士でした。動乱の時代が終わり、明治維新を迎えようとした時、剣心は自分の役割は終わったとして姿を消します。
自分が犯した罪の深さに気づいた剣心は、逆刃刀(さかばとう)を手に「殺さず」を心に誓って、天涯孤独の「るろうに(流浪人)」として放浪していたのでした。
そして舞台は明治10年、ふとした縁で江戸神谷道場に居候することになった剣心は、道場主の神谷薫(女性です)をはじめ心を許せる仲間たちに囲まれ、穏やかな日々を送っていました。

そんな剣心の前に、一人の男が現れます。
かれこそ、幕末の京で抜刀斎と幾たびも死闘を演じた「壬生の狼」、新選組三番隊組長斎藤一。
斎藤は問答無用で剣心に勝負を挑み、10年前の決着をつけんとするかの勢いで襲いかかります。あくまでも「殺さず」を貫こうとする剣心でしたが、斎藤と死に物狂いの戦いを続けるうちに、かれの中に封印したはずの「人斬り」の血がよみがえり始め……。
斎藤は、今は警察官として勤務していましたが、実は大久保利通の密命を受けて、剣心の腕を試すために現れたのでした。

その目的、大久保が剣心に明かした頼みとは――。
今、京で、志々雄真実(ししおまこと)という男によって日本を揺るがす陰謀が進められている。斎藤と協力して志々雄を討ち、かれの企みを阻止してもらいたい、というものでした。
志々雄真実は、剣心が消えた後「人斬り」の任務を引き継いだ男でした。多くの暗殺・謀殺に手を下し、重大な秘密を握ったため、維新後、明治政府によって抹殺されようとしたのです。
瀕死の重傷を負いながら、死の淵からよみがえった志々雄は、復讐の鬼となって、明治政府を根底から揺るがそうとしていました。
もはや「人斬り」は捨てたとして、一度は大久保の依頼を断ろうとした剣心でしたが、大久保が志々雄の部下の手によって暗殺されたことを知り、京に向かう覚悟を決めるのでした。
剣の師である比古清十郎と再会した剣心は、「人斬り」の血を封印した上で奥義を会得するための、命がけの修行に挑みます。
志々雄の配下である十本刀たちとの壮絶な死闘が始まりました。江戸の仲間たちも剣心の後を追って京に向かい、それぞれの闘いに身を投じていきます。
そしてついに、志々雄真実と決着をつけるその時が……。

◆狼の誇り

この作品で、新選組は直接的には描かれません。ただ、剣心の記憶の中の新選組との激闘の日々が、時たまフラッシュバックのように明滅するのみです。
その残滓を具現する唯一の存在である斎藤一という男の生きざまを通して、作者は私たちに新選組というものについて語ろうとしたのでしょう。
斎藤は、表向きは警察官として務めながら、その実、今も新選組としての矜持を持ち続ける「壬生の狼」そのものでした。
決して人に飼われず、組織に拘泥せず、ただ己の信じる正義にのみ従って行動する。それこそがかれの信念であり、狼の誇りなのでした。

作者の和月さんは、自分でも新選組が好きだとおっしゃっています。それゆえ、主人公が倒幕側の立場でありながら、新選組や旧幕府を単純に「悪」とせず、きちんと評価してくださっているのがうれしいですね。
幕末の混沌の中で、新選組も倒幕派の浪士も、それぞれが自分の信じるものに従い、己の正義のために命を懸けて戦った。やがて官軍と賊軍に立場は分かれたが、その生きざまそのものに、優劣があろうはずもない――と。

ともあれ、志々雄編の導入部分でもある、前述の斎藤と剣心の対決シーン、テレビシリーズの中で私が一番好きな場面です。二人とも鬼気迫る迫力で、かっこいいのなんの!
文字通り手に汗握るというか、息をするのを忘れてしまうくらい……。
その後も、志々雄編を通して、斎藤は重要な役回りで登場し、そのたびに強烈な印象を残していってくれました。

これ以降、私の中の斎藤一はどんどん大きくなっていき、それに呼応するかのように、今までマイナーだった斎藤一が一般的にも大きく取り上げられるようになったのです。
「壬生義士伝」(小説・映画)のヒットなどもあるかもしれませんが、若い人たちの間で最近やけに斎藤人気が高いのは、やはり「るろうに剣心」の影響が強いのではないでしょうか。
そうそう、私は途中で見るのをやめてしまったけれど、N○Kの「新選組!」でも、オダギリジョーさんの演じる斎藤は、ピカイチにステキでしたね〜〜。
これからも、小説やドラマ、映画などで、どんな斎藤一が描かれるのか、
興味を持って見守っていきたいと思います。