I LOVE 新選組

マンガだったら 「俺の新選組」

新選組を描いたマンガは、数え切れないほどある。少年マンガ、少女マンガ、シリアスからギャグまで、それこそ百花繚乱だ。
もちろんすべてを読破しているわけではないので、断定はできないけれど、私の一番のお勧めは何といっても、望月三起也氏の「俺の新選組」である。
かなり古い作品(高校生時分だよ~~)だが、最近復刻されたようなので、幾分手に入りやすくなったのではないだろうか。

主人公は土方歳三だが、月代を剃り上げた涼しい美男子で、最初見たときは沖田総司かと思ってしまった(笑)。
雰囲気的には、確かに「燃えよ剣」の土方っぽくてクールなんだけど、少年マンガというジャンルのせいもあって、この土方は結構かわゆい部分もあったりする。草もち売りの少女に、プラトニックな恋心を抱いたりするところとかね(まるで沖田総司のエピソードみたい……笑)。

ストーリィは、要所要所に史実を織り交ぜてはいるものの、核になるエピソードそのものはほぼオリジナルで、新選組結成から芹沢鴨暗殺にいたるまで、創生期の新選組を丁寧に描いている。
人物造形も秀逸で、土方はもちろん、近藤、沖田など試衛館の面々や、芹沢、新見といった敵役まで、個性溢れる魅力的なキャラとして描かれているのが素晴らしい。

中でも特筆すべきは、山崎烝(嬢)と原田左之助だろう。
この作品の山崎は、女性である。それも男装して入り込むとか、そういうややこしいのは一切なし。京の大店山崎屋のお嬢様で、ひょんなことから新選組の監察方を務めることになるという、しかもいつでも振袖着てるし(笑)…荒唐無稽ですな~~。
原田の方は、実は彼こそまちがいなく、いつもの望月氏の作品の主人公タイプである(性格も顔もね、ワイルドセブンばりばりやし)。
始めは遠慮がちに脇役っぽくふるまってたんだけど、どんどんキャラが大きくなって、ついには主役を食ってしまってたなあ。特に、望月マンガの真髄ともいうべきアクションシーンは、原田が一手に引き受けていた感がある。
男気いっぱいの、原田ファンにはたまらないキャラクターだろう。

さらに、沖田総司がすごくいいのだ。外見はとても強そうに見えない、のほほんとした捉えどころのない若者なのだが、でも「やる時はやる!」タイプ。どちらかというと「新選組血風録」のイメージに近いかもしれない。
宿場のど真ん中で大焚き火をして暴れる芹沢鴨を、柿の枝に突き刺したイモだけで黙らせてしまうところや、「江戸を出発する時姉さんが『総司、京へいったらおしるこでもお食べ』ってくれた二両、酒買ったら申し訳ないもの。だからさ、おくれ二百文」と、さらりと芹沢に酒代を請求するところなど、読んでいてゾクゾクしてしまう。
近藤が「総司は不思議な男じゃもの、だれもやつを斬れんよ」というのも頷ける。

なによりも、この新選組には信念がある。ここに出てくる試衛館の連中には、踏まれても踏まれてもそこから這い上がり、立ち上がろうとする熱いハートがある。
それは仲間を思う友情であり、強大な相手に立ち向かう勇気であり、己の信じる道をひた走ってゆく強さだ。
まだまだ続きがありそうなのに、途中で終わってしまったのは残念でならない。いつか再開される日がくるのを、心から待ちたいと思う。