いにしえ・夢語り千華繚乱の庭物置小屋落書きの部屋

筒井筒 井筒にかけしまろが丈…

謡曲「井筒」のイメージから


「昔のお仕事から」シリーズ
山辺広域のハイキングのチラシなのですが、実はこのチラシには私自身はまったく関わっていません。
イラストだけは自作なんですけれど……。別の仕事で描いた作品を、観光課で利用されたんですね。もちろん、使用にあたっての「お断り」はちゃんとありましたけどね。
ここでいう「歌人」というのは、柿本人麻呂と在原業平のことです。うちのご近所には、この超有名人二人にゆかりの場所があるんですよー。ちょっとすごいでしょ(笑)。

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このイラストは、世阿弥の能「井筒」を絵物語風に描いた連作のうちの1枚です。
当地にゆかりの在原業平と「井筒」を、市民のみなさんに分かりやすく見てもらおうということで、謡曲「井筒」のシーンを何枚かのイラストにしました。この女性は、かつて業平と愛し合った紀有常(きのありつね)の娘。幼い日に二人で遊んだ懐かしい日々を思い出している、というシーンです。
私が作った観光パンフレットに、在原神社についての説明がありますので、引用してみましょう。↓ (2006/5/18)



「伊勢物語」に題材をとった世阿弥の夢幻能の傑作「井筒」。その舞台となったのがここ在原寺(現在原神社)である。
平安時代の歌人であり美男子として知られた在原業平が、紀有常の娘と居を構えたところと伝えられ、芭蕉も旅の途中この地に立ち寄っている。

「筒井筒 井筒にかけしまろが丈
    すぎにけらしな 妹見ざるまに」


幼なじみのふたりが背丈をくらべた井筒も、年を経て昔の物語となった。魂だけになった今も、女は業平を慕い、男の直衣をまとって謡い舞う。水鏡(みずかがみ)に映る姿に、懐かしい男の面影を追い求めて――。
寺は廃されてささやかな神社となり、世阿弥がえがいた永遠に変わらぬ愛の物語の舞台をしのぶよすがもない。境内にわずかに残る井筒と夫婦竹にその名残をとどめているばかりである。