今月のお気に入り


人形劇 三国志
殿、ご決断を…

この間まで、「時代劇専門チャンネル」で放映していた「人形劇三国志」を毎日見ていました。……ばかりでなく、毎回ハードディスクに録画し、次にそれをDVDに落としては、せっせと我が家の「人形劇三国志 永久保存版」を作っていました。
なにしろ、これ見たさにケーブルテレビの契約を、それまでのアナログからデジタルに変更したのですから。ただ、当時は息子が受験生だったこともあり、なかなか決断できずにぐずぐずしていたせいで、最初の2話だけは間に合わなかったのですが……(泣)。
それでも、そのおかげで7月から始まる「栗塚旭特集」を見ることができるのですから、ここは「人形劇〜」に感謝すべきでしょうね(笑)。
なにより、欲しかったけど高くて買えなかった「人形劇〜」を、自前とはいえ録画することができましたし、もう大満足。
その「人形劇三国志」、いよいよ今月のお気に入りに登場です。
私の三国志遍歴を語る上で、大切な大切な作品であると同時に、大好きな孔明や関羽の人物像など、「人形劇〜」から受けた影響ははかり知れません。

「人形劇三国志」は、昭和57年10月から59年3月までNHKで放映されました。それまでNHKの人形劇といえば、15分程度の番組を毎日放映していたというのがパターンでしたから、この作品が毎週土曜日の6時から1回50分の長さで放映されたというのは、それこそ異例のことでした。
実は、今回改めて調べてみるまで、もっと前に(私が学生の頃に)放映されていたのかと思っていたのです。というのも、私が吉川英治氏の「三国志」で思いっきり三国志にはまったのが大学生の頃で、同じような時期に人形劇も見ていたような記憶があったからなのですが、どうやら勘違いだったようですね。
本放送は、今の職場に勤め始めてから後だったということが判明。その後、産休で実家に帰っているときに再放送していて、毎日見ていたなあという記憶があります。
つまり、すでに三国志どっぷりだったんですよ、この頃の私は。もちろん大昔から蜀大好きっ子でしたから、劉備・関羽・張飛の義兄弟を主人公に、演義準拠で作られた「人形劇〜」は、自分の基本スタンスにぴったりで、それこそ思いっきりはまってしまったのでした。


ああ、何だかもう、思うことがいっぱいで、何から書けばいいのやら……。
まず何よりも、川本喜八郎さんの手になる、芸術品ともいうべき人形たちを語らなければなりませんね。とにかく「すばらしい!」の一言。
一体一体心を込めて作られた人形は、それぞれその人物の特徴を余すところなく表現していて、生命あるもののごとくに雄弁です。
もちろん、ちょっとしたしぐさや表情など、人形を操演しておられる方たちの技量に負うところも大きいのでしょうが、やはり人形の命は「顔」というか「頭(カシラ)」ですよね。
能面と同じく、少しうつむいたり傾けたりするだけで、泣いているようにも怒っているようにも、また微笑んでいるようにも見える。まるで生きているかのように、その人物の内面を表現することができる。そんな無限の可能性を秘めた人形の「頭」。
それぞれの人形たちが身に付けている衣装もまた、その人物にぴったりのすばらしいものでした。

こんなすばらしい人形が、「人形劇〜」には500体以上も登場しますが、中でも私が一番好きだったのは関羽の人形です。いえいえ、関羽の「人形」というよりも、何もかもひっくるめて関羽サマが一番好きだった、と言った方が的確かな。
本当に、ここに出てくる関羽は、それこそ気は優しくて力持ち、強くて賢くて、男気があって……。そりゃもう、絵に描いたような「漢前(おとこまえ)」。男が惚れる男ってやつで、曹操があんなに惚れこんだのも納得ですね。
まして乙女の心情とすれば、見せ場はいっぱいあるし、最後の最後までかっこいいし。これで「惚れるな」って言う方が無理(笑)。石橋蓮司さんの声もすごくよく似合ってて、関羽が画面に登場するたびに、いつもクラクラしてました。
どうも関羽って、日本人にすごく人気があるようです。もちろんご本家の中国でも、神様になっているくらいですから人気がないわけはないのでしょうが、どちらかというと庶民的人気は張飛の方が上らしいですね。
日本人が関羽好きなのは、彼の義に厚いところとか、文武両道なところとか、そういうメンタルな部分が、すごく日本人好みなんじゃないかな。
「人形劇〜」の関羽にも、かなりスタッフのひいきが入っているような気がするのですが。
後、好きなのは、もちろん孔明さま。ラストの方で着ていた衣装が、すごく似合ってて渋かったなあ。
趙雲も若々しくてかっこよかったし、諸葛瑾とか馬良もステキでした。

我が家には、この「人形劇三国志」の人形たちを収めた「三国志百態」という写真集があります。おそらくは、我が家にある書籍の中で一番高価な本なのではないでしょうか。
ずっと以前に大阪で開かれた人形展を見に行き、その場で購入したものです。とっても重くて、帰り道めげそうになりながら持って帰りました(笑)。
この人形展。それはそれはすばらしかったのです。
何しろ、実際に人形劇の中で使われた人形たちが、目の前に並んでいるのですもの。
一番最後のコーナーに飾られていた孔明さまの人形の前で(五丈原をイメージした展示でした)、声もなく長いこと立ち尽くしていたのを覚えています。


そして、人形とともに忘れてはならないのが「声」。人形たちにそれこそ生命を吹き込んで下さっていた声優さんたちです。
ほんとに不思議なんですが、「人形劇〜」の声優さんって毎回わずか6〜7人しか出ておられなくって、それだけの人数ですべての人形の声をあてておられたんですね。
当然、一人で何役も掛け持ちされていますから、同じ声優さん同志が会話する、なんていうシーンもたびたびあるわけで……。本当に皆さん器用でいらっしゃったというべきか(笑)。
谷隼人さん(劉備)、石橋蓮司さん(関羽)、せんだみつおさん(張飛)、森本レオさん(孔明)、松橋登さん(趙雲)、岡本信人さん(曹操)、三谷昇さん(ホウ統)、長谷直美さん(淑玲)、伊佐山ひろ子さん(美芳)、田坂都さん(貞姫)などなど、みなさん本職の声優さんじゃない方たちですが、芸達者な俳優さんたちが揃っておられました。
特に、関羽の石橋蓮司さん、孔明の森本レオさん、曹操の岡本信人さんは、もうこれ以上ない!っていうくらいのはまり役だったのではないかと思います。
「殿……」と呼びかける孔明の声に、何度もだえたことか(爆)。

とにもかくにも、これで我が家のライブラリーにまたひとつ、大切な宝物が増えました。
「時代劇専門チャンネル」での再放送も決定したようだし、今度は、取り逃した第1話と第2話を失敗しないように録画したいと思っています。

2007/7/3




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