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五丈原余話 「君ありてこそ」 あとがき




毎度毎度、姜維くんの話ですみません。しかも(作者が言うのも何ですが)、どうということもない話だし……。まあ、五丈原での一日、こんなこともあったかもね、くらいの軽い気持ちで読んでいただけたらと思っています。
結局のところ、姜維と香蓮の濡れ場(ぶっ!)を書きたかっただけかも(爆)。
自分の子どもに読まれたら、ちょっとヤバイかなあ……ということで、気持ち的には15禁くらいにしたかったのですが(笑)、まあそれほどハードでもないので、軽く読み流していただければ幸いです。

大体、突然出てきて、香蓮ってあんた一体何者よ?と思われた方も多いことでしょう。
彼女は、姜維が蜀に降ってから娶った妻という設定で(もちろんオリジナルなのですが)、私がずっと書き綴っている「姜維立志伝」という長編(しかもかなり後半)に登場する女性です。
女だてらに敵の大将を暗殺に行こうなんて、とんでもない話だと思われたかもしれませんが、実は、彼女の出生にはある秘密があります。ややこしくなるのでここでは触れていませんが、それがわかれば、男勝りの彼女の行動も納得していただけるのではないでしょうか。
「姜維立志伝」では、そのあたりのことも詳しく書いてみたいと思っていますが、はてさて、いつになることやら……。

それにしても、うちの(?)姜維くんは、いつもいいヤツですねえ。
もうちょっと感情をストレートに出してもいいんじゃない?っていうか、もう少し複雑な人間になってもらわないと、書く方も面白くないぞ(笑)。
優等生っぽい「いいひと」よりも、一見悪人ぽい、アクが強くて個性的な人の方が、人間味があって面白い人物造形ができますよね。それは分かっているんだけれど……。
とはいえ、一度自分の中で出来上がってしまったイメージを変えるというのは難しいものです。私の場合、特に諸葛亮、趙雲、姜維などは、もうすっかり「まじめ、ひたむき、高潔」という基本形が固まってしまっており、このラインをどうしても崩すことができません。
でもいつかは、(外伝か短編か何かで)もっとクールでダーティな姜維くんを書いてみたいなあと思っています。
孔明さまが死んだ後の彼って、ちょっと「狂」的なものを感じる部分がありません?そのあたりをふくらませて、「暗い眸(め)の姜維」が蜀漢ともろともに滅び去っていく姿を静かに見守りたい……。姜維書き(?何という造語)としては、やはりそこまで描ききってあげなければ、と思うのです。

この原稿の初出は、春野蓬さん主宰の三国志創作サイト「銅雀台桃花大酒楼」です。当サイトへの掲載にあたり、若干の加筆修正をいたしました。


男には男の悲しみが、女には女の悲しみがある


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