いにしえ夢語り浅葱色の庭讃・新選組

二 人 静




――ねえ、私の声、あなたの耳に届いてる?



あの夜、平助くんは人であることを捨てた

私のために傷を負い
私のために命を失い
私のために……人として生きることを諦めたのだ

人としての喜びも、悲しみも
あなたがこれから出会うはずだったすべてのものを
私がこの手で奪ったのだ

許してもらおうなんて、思っていない
ただ、あなたと一緒にいたいだけ



あなたが
羅刹と化した我が身を疎ましく思うのなら
私も同じものに身を落とすから

あなたが感じる恐怖を
底知れない悲しみと怒りを
私もともに背負うから



だから、傍にいていいですか?



いつでも
あなたの声が聞けるように
あなたの鼓動を肌で感じていられるように

あなたの傍らに寄り添うその距離を
私に与えてくれますか

許されるなら
あなたに残された時間を
あなたとともに生きたいと――



静かに
ひそやかに
いつまでも……

二人の夢の時間が永遠(とわ)であってほしい
そう希う、私の声が届いてる?

平助くん――






◆◇「二人静」によせて◇◆

久々に新選組熱が再燃したのは、「薄桜鬼」というゲームのせいです。私としては、初めて手にした乙女ゲーだったのですが、そこに登場する新選組隊士たちのかっこよさに、改めてはまってしまいました。
中でも、一番胸きゅん(笑)だったのが、まさかの藤堂平助! 今まで、ほとんど注目したことがなかったのに、このゲームで描かれる等身大の平助くんは、もうほんとに可愛くて愛しくて…。この年になって、まさかこういうタイプに転ぼうとは(爆)、自分でも驚きでした〜。
という訳で、この詩も、ばっちり「薄桜鬼」準拠になっております。
ヒロインを助けるために、瀕死の重傷を負った藤堂平助は、変若水(おちみず)という薬を飲んで一命を取りとめるのですが、実はこの薬は、人を羅刹と呼ばれる一種の吸血鬼に変えてしまう禁断の薬だったのです。
人ならざるものになってしまった平助と、彼のために己のすべてを捧げたいと願うヒロインの切ない思い…を、拙い言葉で綴ってみました。ご笑納ください。



BGM 悲望/From「SOUND IMAGE」

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